かつて歯槽膿漏と呼ばれていました。
歯を支える歯槽骨や歯肉、セメント質や歯根膜などの周囲組織が障害、破壊される病気(バイオフィルム感染症)です。
歯周病は大きく分けて歯肉の炎症による出血、腫れを特徴とする歯肉炎と、歯を支えている歯槽骨をも破壊される歯周炎に分けられます。
特に成人では歯周炎が多くなり、約80%の成人が歯周炎にかかっています。また中高年の歯を失う原因の第一位(約50%)となっています。
しかしながら歯周炎はSilent disease(静かなる病気)といわれるように重症化するまで痛みなどの自覚症状があまりありません。それが歯周炎の恐いところで患者さまの対応が遅れてしまうのです。「10年前に出会えていたら…」ということもたくさんあります。
歯周病は「非可逆性の病気」で、一度失われた歯周組織は罹患前の完全な状態には戻りません。(歯周組織再生療法である程度回復は可能です。)
また歯間の隙間の発生・増大、知覚過敏などの後遺症を起こします。したがって早期発見、早期治療がとても重要です。
歯周病の治療は保険適用(予防処置・一部の術式は適用外)で行えますが、学術的にも裏付けされたルール、進行で行います。
歯周組織の破壊の程度が局所にとどまっている段階であれば破壊形状などの条件にもよりますが、失われた歯周組織をある程度再生することが可能です。
歯周組織再生療法にはいくつかの方法がありますが、エムドゲイン(EMD:ストローマン社)等を用いた再生療法を行っております。
抜歯予定であった歯を保存し、機能できるまで回復することも可能となっています。
なお、歯周組織再生療法は自費治療となります。
また、治療結果を安定させ、再発を予防するために、定期的な検診、PMTCなどのメインテナンスプログラムを受けられることが大切です。
100%の清掃度を毎日維持し続けることは大変なことです。
少なくとも問題を起こす可能性が低くなる60%の清掃度を目標に、定期的な検診やメインテナンスしていくことが非常に重要になります。そのためには歯間ブラシやデンタルフロスによる歯間部の清掃が必須となります。
歯周病の原因は清掃不良の歯の表面にくっついている歯垢(プラーク)中の複数種の細菌(歯周病原因菌)が主たる要因です。その他、歯周病になり難いとか、なり易いとかいった「遺伝的要因」および喫煙、加齢、ストレスなどといった「環境要因」の二つの要因が関わっています。
歯垢(プラーク)に感染が成立するのには,必要な条件として細菌の存在,感染可能な宿主(ポケット内の歯根および歯冠の表面)の存在,および感染する経路の存在が必要条件です。逆にこれらに対応することが治療方法になります。
歯垢(プラーク)はバイオフィルムという細菌により形成される構造体で、歯の表面に粘り付いており、歯ブラシなどで機械的に清掃しないと除去することが難しく、放置しておくと唾液中のカルシウムやリンなどにより石灰化して歯石となっていきます。ちなみに歯垢1mg中には10億個の細菌が住みついているといわれ歯周病のみならず虫歯を発生させます。
歯と歯肉の間にある歯肉溝に歯垢(プラーク)が長く停滞する時間が長くなると炎症が持続します。すると歯肉を腫脹させる(歯肉炎)だけではなく歯と歯肉との間の接合が破壊され、ポケットが深化していくと歯周ポケットとなります。そうなるとポケット内の細菌は嫌気性菌によって構成されるようになります。空気が無いところを好む嫌気性菌はどんどんポケットの深層に向かいます。
嫌気性菌が持っている内毒素や炎症の起炎物質は歯周組織の細胞に反応してサイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質)や酵素類を過多に産生し続けるので、歯周炎としてひどい骨吸収やコラーゲン線維の破壊を引き起こします。 重要なことは歯周炎が「骨が破壊される病気」だということです。だから末期になると多くの歯がグラグラして歯が抜け落ちたりするのです。